ことばのリボンKindle「この日」
今月から、ことばのリボンを再開します。
4月に電子書籍化されたものから毎週1編ずつ紹介し、
月に一度、新しくことばを綴る予定です。
どうぞお楽しみに。
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「3月11日」という日を毎年迎えるたびに、
きっと皆が、何かを想うのですね。
「あの時間」と、ほぼ同じ時間の今日の空。
揺らめく雲が、少し胸をざわつかせます。
3月に入ってから、一日一日が何だかスローテンポに感じていました。
でも、やることは山のようにあって。
全く心が追いついていない状態です。
震災が起きてからの数ヶ月、リピートして聴いていたCDを
久しぶりに部屋で流してみました。
すると色々なことが蘇ってきます。
あの時。
ただひたすら、
避難所や給水場所の地名を伝え続けた震災後の数週間。
自分の言葉が無力に感じて、賑やかなテレビはもちろん、
やわらかな音楽でさえ受け入れられませんでした。
あれからの私は、何か変わったのかな。
ちゃんと何かを届けることが出来ているのかな。
目に見えないものばかりを饒舌じょうぜつに語ることで、
誰かを傷つけていないかな。
不安になることも、いっぱいあります。
それでも。
それでも、胸をざわつかせる空だって、
時の流れとともに澄みきった青色や、
一面を紅く染めるまぶしい朝焼け、
穏やかな光に包まれた夕暮れになる。
世界は、煌きらめいて、美しいもので溢れている。
人はあたたかい生きものだし、
言葉や音楽も、大きなちからになる。
そう信じて、自分の道を歩んでいます。
間違ったり、迷ったりすることも沢山あるけれど、
それでも私は生まれ育った故郷である福島で
「ことばのリボン」を結んでいきたいと思っています。
しばらく眺めていた空は、
澄みきった青空に変わっていました。