ことばのリボン「紋様」

毎月最終金曜日には、新しい「ことばのリボン」をお届けしています。
前向きな気持ちを維持するのは、なかなか難しいものです。
悲しみや苦しみ。痛み、切なさ。
簡単には表現しきれない気持ちのほうが、
圧倒的に、日々の心を占めています。
一度作られたガラスの模様が変えられないように、
いつまでもいつまでも
心の奥底に残っている記憶もあります。
それらは、何の予兆もなく蘇(よみがえ)り、
一気に心に押し寄せて、感情を揺さぶります。
当時の空気、感覚、言葉たち。
ありとあらゆるものが、鮮明になって溢れ出していく。
簡単に消えない苦い記憶は、
自分にとって、
簡単に消してはいけないもの。
だから時折、表に顔を出すのでしょう。
けれど
散々思い出すだけ思い出したら、
知らぬ間に、消えていくものでもあります。
ゆっくりと沸かしたお湯の中から、プツプツと気泡が弾けるように。
うなされるように思い出して、
しっかり自分を戒(いまし)めて、生きよう。
そうすれば、
ガラス窓の先に広がる美しい景色を、
心から楽しめるはずだから。
・・・でも、本当に時々で良いかな。